岡村愛一公開講座
第三部 日本近代史

日本近代史について 序

『日本近代史の研究』は、私が大学卒業後に講義された講義録です。先生が望星学塾(昭和四十三年四月)に着任されてから五年目に完成されたもので、この内容は近代史の見方だけでなく先生が研究された、幕末、明治維新から明治、大正、昭和までの歴史の総集編でもあります。ここでは、先人がその時代を生き抜くためにどのような工夫をし、日本という国家を形成してきたのか、先生が生きてこられた明治、大正、昭和と重ねて考察され学生に問われたものです。先生は、戦後軍人から距離をおかれ社会人として生きてこられましたが、きっと戦前の事も含めて歴史を検証されようとなさったに違いありません。

明治維新後、日清・日露の戦をどう切り抜けたかは、一例に陸奥宗光の「蹇蹇録(けんけんろく)」、徳富蘇峰著の「近世日本国民史」などを参考に講義されています。これらは、先人の叡智の詰まった歴史書を我々が学び生かすために講義下さったものと拝します。他に明治天皇、昭和天皇の和歌がこの中に紹介されています。これは別の歴史書には見られないものであり、私にとって歴史をどう見、自分がどう考え、どう生きるかのヒントになりました。

平成が終り令和の時代になりましたが、歴史の見方は大半が過去のままです。

ここでは、近衛公の遺言にあった、
「しかし僕の志は知る人ぞ知る。そこに多少の知己が存することを確信する。戦争に伴う昂奮と激情と、勝てる者の行き過ぎた増長と、敗れた者の過度の卑屈と、故意の中傷と誤解に本づく流言蜚語なるものもいつかは冷静さを取戻し、正常に復する時も来よう。其の時初めて、神の法廷に於て正義の判決が下されよう」 昭和二十年十二月十六日」

また、パール判事の判決文の中に
「時が熱狂と偏見をやわらげたあかつきには、また理性が虚偽からその仮面を剥ぎとったあかつきには、その時こそ正義の女神はその秤(はかり)の平衡を保ちながら、過去の賞罰の多くに、そのところを変えることを要求するであろう」と表明され。「味おうべき予言である」と法学博士である清瀬一郎弁護士は「パール博士の日本無罪論」(慧(けい)文社刊)の推薦文中で指摘されています。

これ等の指摘は、正に正論であり、今種々の戦後史の開封から歴史を総合的に検討する時期に来ていることを感じます。様々の歴史の真実が明らかになりつつありますが、その中にあって、お二人の証言は今光彩を放っており、重要な意味を持つと思われます。私が生きてきた昭和から平成、令和の時代、歴史の様々の書物に出会いましたが「アメリカの鏡・日本」ヘレン・ミアーズ著や「誰が第二次世界大戦を起こしたのか」渡辺惣樹著などは、戦後史の謎を読み解くのに参考になると考えます。平和に対する考え方でも、戦争か平和かの二者択一論で考えられどちらが正しいか的思考法が目につきます。そこからは祖先が苦労して時代に対応してきた姿は浮かび得ないでしょう。今後、我々が将来に禍根を残さないためにも、また先人の尊厳を取り戻すためにも正当な歴史の検証がなされ、歴史教育に生かされることを祈ってやみません。

第一章 歴史とは何か

歴史とは何かについて解説、諸々の考え方、歴史観を紹介されています。歴史の新たな史料が発見されてその見方が変わろうとしている中で、自分の考え方を整理する上でも欠かせない諸点だと思います。ご検討下さい。

第二章 明治維新・明治時代

徳川時代が終わりに近づき、ペリーの来航以後、新政府は、政治の形を近代化すべき状況にありました。また、一方では、西欧の外的圧力の中に危機を感じながら改革が迫られていたと思われます。新政府は、西欧を手本に政府の樹立と日清・日露戦争を凌ぐ対応をしていきました。日本の自立を目標に掲げ国民が一体となって国家の建設を目指したと思われます。ここでは、当時活躍した人物の足跡をたどりながら、その行程が語られています。祖先の努力を顧みながら検証したい内容です。

第三章 大正時代

大正時代は、西欧を中心とした驚愕の第一次世界大戦起っています。その後の世界情勢では、ベルサユ条約、ワシントン会議などに於て、軍事バランスをどうするかなど、各国が自国の利益を競った時代でした。国内では自由の考えが広がり大正デモクラシーを謳歌した時代とも言えましょう。そうした中で近衛文麿は「英米本位の平和主義を排す」という論文を遺しています。大正時代、哲学を志した近衛はその時代をどう分析し、何を考えていたのか確かめて見たいところです。

第四章 昭和時代

大正時代の課題を背負ったなかで迎えた昭和時代、軍国主義の勢力が力を増し、英米中他を含めたアジア・太平洋にまで拡大した大戦争という激動の時代でした。昭和20年の敗戦による占領を経験し、後世に課題を残すことになり、それは現代も続いています。ここでは、そうした戦中戦後のことを中心に特徴的な内容を紹介されています。史実が解明されてきている中、当時の識者の意見と日本の対応など考え、将来に生かしたい章です。


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